衛星放送協会

衛星放送協会は、協会会員社が提供する
有料・多チャンネル放送の啓蒙、普及発展を推進する団体です。

活動報告

第11回人材育成セミナー

2017.12.04

第11回の人材育成セミナーは、『テクノロジーでスポーツを変える!』をテーマに開催されました。

加藤善彦氏

加藤善彦氏

今回のセミナーでは、プロ野球、 Jリーグ、 Bリーグ、ラグビートップリーグなど様々なスポーツのデータを扱っている、データスタジアム株式会社より、代表取締役社長 加藤善彦氏、メディア事業推進2部 部長 尾関亮一氏、ナレッジ開発チーム兼ベースボール事業部アナリスト 金沢慧氏のお三方をお招きして、それぞれがご担当されている分野で蓄積された見識を中心に、加藤氏より会社設立までの歴史や背景などが説明された後、尾関氏より「メディアトレンド・事例紹介」、金沢氏より「現場の解説・試合分析」について講演され、いずれも興味深い内容でありました。

尾関亮一氏

尾関亮一氏

尾関氏の「メディアトレンド・事例紹介」については、まず、最も基本となるデータ(選手のプレーや動き、ボールの軌跡など)の収集方法は「人手による入力作業が基本だが、トラッキングシステムの先進地域である欧州などのツールも利用する」といった“競技や取得するデータに相応しい手段により収集している”とのことで、それらのデータを映像へ反映した際のイメージを具体的なサンプル映像を紹介されながら「このデータ反映後の映像は、その競技に知識や興味を持たない方にも直感的に解りやすくなることで、競技への興味を惹起させる効果がでることがある」とのご説明を頂きました。更に、新たな試みとして5,000試合以上のインターハイ競技の映像配信を行った結果、なかなかメディアに載らないこのような競技映像に対する視聴需要・視聴対象についても話が及びました。

金沢慧氏

金沢慧氏

金沢氏の「現場の解説・試合分析」については、金沢氏ご自身が出演されている番組「球辞苑」のホームスチールの回を取り上げ、データ分析の「データが無いこともエンタメ・解説番組になりえた」といった逆説的な事例を紹介されました。また、プロ野球チームにおける実際のデータ分析・活用に関しては、プレイヤー/経営陣・短期目線/中長期目線、の組合せによる4つのカテゴリ分類と、その4分類に対してソフトバンク千賀投手とDeNA筒香選手のデータ、大リーグのダルビッシュ投手のデータなどを当てはめ、データ分析・活用の日米の違いを「日本は選手・監督目線で短期(1日~シーズン中)スパンでの活用」、「米国は経営陣目線で中長期(1年~数年先)スパンでの活用」という傾向であり、例えるならば「日本は『野村ID野球』・米国は映画『マネー・ボール』という違いである」ということを示された内容でした。今後のデータ分析・活用の方向性についても、人工知能「ZUNOさん」による予想結果を例に、AI化の研究も行われていることやその近況などをご紹介いただきました。

講演後の質疑応答では「データ利用する際の価格は?」等、参加者からかなり積極的な質問が飛び交い、それらに対し講演者から熱意ある回答がなされるという白熱したやり取りとなり、スポーツ番組へのデータ活用の可能性について理解を深めるとともに視界を広げることができた有意義なセミナーとなりました。

 

 

開催日時 平成29年11月16日(木)15:00~18:00
会場 衛星放送協会 会議室
参加者 16社50名

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第21回倫理委員会・CAB-J共催セミナー

2017.11.22

熊谷 勝氏

熊谷 勝氏

今回で第21回となる倫理委員会・CAB-J共催セミナーは、講師に、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部企業取引課の熊谷勝氏を迎えして、「下請法・優越的地位の濫用規制」の演題で開催しました。

今回のセミナーでは、下請法の制度趣旨、適用される対象、義務内容、禁止行為などの事項と、独占禁止法上の優越的な地位濫用の判断要素等のほか、放送事業者に関係するコンテンツ業界の事例なども交え、分かりやすく解説して頂きました。

 

開催日時 平成29年11月13日(月)14:00~15:30
会場 衛星放送協会 会議室
講師 公正取引委員会事務総局 経済取引局取引部企業取引課長補佐 熊谷 勝氏
参加者 37名

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災害対策委員会セミナー「見たくないことも直視し企業の震災対策を!」

2017.11.15

福和伸夫氏

福和伸夫氏

災害対策委員会では、平成29年度のセミナーとして改めて震災対策に焦点を当て、2年前にも講演していただき大変反響の大きかった、名古屋大学減災連携センター長の福和伸夫教授を再びお招きし、「見たくないことも直視し企業の震災対策を!」と題したセミナーを開催いたしました。

福和教授は、ほとんどのBCPは見たいことだけを定義していると指摘したうえで、楽しみながら見たくないことを気づかせてくれたとして、映画「シン・ゴジラ」などを通してつきつけられた課題を紹介されました。
また、貞観地震が起こった1150年前と現代を比較し、原発事故以外はすべて同じことが起こっているとし、今後起こり得る南海トラフ地震などへの対策に、何が何でも東日本大震災の教訓を生かさなければならないと話されました。
そして、見たくないものを見ない個々のBCPだけでは、これからは成り立たないとし、企業、行政、地域、ライフラインなどで連携したBCPが必要であると締めくくられました。なお、これのモデルケースとして、豊田市・岡崎市を中心とした中部地域で連携BCPの構築を目指しているとのことでした。

毎年のように大きな地震が頻発する昨今では、常に震災対策の見直しが不可欠であり、さらには、個社対策だけではなくBCPを連携させることで「見たくないこと、見えていないこと」を表面化し、具体的な対策につなげていくことが重要である、と気づかされました。 福和教授の講演は、厳しい指摘をされながらも時には冗談も交えるなど、とても興味深く、あっという間の1時間半で、盛況のうちに閉会となりました。

開催日時 平成29年11月6日(月)15:00~16:30
講師 名古屋大学教授・減災連携研究センター長 福和伸夫氏

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青少年健全育成活動 ~テレビ番組のイベント現場を探検しよう!~

2017.10.23

倫理委員会では、衛星放送協会が目指す青少年健全育成活動の一環として、小学生を対象に「イベント見学&お仕事体験ツアー」を開催致しました。

7回目となる今回は、本企画にご賛同いただいた正会員社のターナージャパン株式会社にご協力を頂き、公募で選ばれた3名の小学生とその保護者に、世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2017」に出展したカートゥーン ネットワーク&旅チャンネルのイベント見学とチャンネルプロモーションの仕事を体験していただきました。

当日は、衛星放送協会の理事から体験会の趣旨、有料多チャンネル放送についての説明に続いて、参加者はイベント用のTシャツに着替え、さっそく撮影イベントに出演する『ぼくらベアベアーズ』の着ぐるみたちのアテンドを体験。子どもたちは、前がよく見えず歩きづらい着ぐるみたちの手をひいて、イベントブースまで案内しました。

続いて、子供たちは場内アナウンス係・チラシとシールの配布係に分かれ、保護者は場内アナウンス係・来場者と着ぐるみたちとの写真撮影係にそれぞれ挑戦しました。最初はなかなか大きな声が出ずに、緊張している様子でしたが、慣れてくると皆さんみるみるうちに上手になり、親子で仲良く楽しそうに仕事をしていました。お子さんと保護者が一緒になって現場を体験してもらう趣向は今回初の試みです。
最後には、参加者全員に修了証書が授与され、好評のうちに「体験ツアー」は終了しました。


倫理委員会では、この貴重な体験を通じて、青少年が将来に大きな夢を持ち、職業人となる自覚を高めてもらうお手伝いができればと考えています。
今後も定期的に青少年育成活動を行ってまいりますので、会員各社のご協力をお願い致します。

開催日時 平成29年9月24日(日)10:30~14:15
場所 東京ビッグサイト(東京都江東区)
内容 カートゥーン ネットワーク&旅チャンネルのブースイベントで
チャンネルプロモーションの仕事を体験
参加者 小学生3名(保護者同伴)

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第4回次世代セミナー(ケーブル委員会)

2017.09.01

衛星放送協会ケーブル委員会では、この度、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟様、App Annie Japan株式会社様、株式会社WOWOW様のご協力を頂き、各社様の最新の情報をご説明頂ける機会を頂戴することができ、第4回次世代セミナーを2017年8月3日(木)に開催致しました。

第1部: 営業現場で話せる/使える?ケーブルテレビの「高度BS、第3世代STB・A-CASについて」
一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟 
放送制度部長 角田 俊哉 様
角田 俊哉様

角田 俊哉様

4K・8K実用放送の概要、BS/CS右旋/左旋についての説明の後に、ケーブルテレビの4K・8K放送への取り組みの現状、4K・8KBS本放送への対応(FTTH化、FTTN化他、BS右旋帯域再編に向けた課題、BS・CSトラポン周波数とIF変換周波数の関係、集合住宅におけるBS・CS左旋IF伝送の課題、IFパススルー伝送での無線との干渉の課題)、総務省 4K・8K放送推進連絡協議会の概要、A-PABに関して(概要、周知広報委員会の活動、4K・8K関連調査データ)、4K STBの実現形態(想定される4つの方法)、共同調達STBの仕様概要、リモート視聴対応と将来の拡張サービス連携イメージ、A-CAS(新CAS協議会について)、ケーブル次世代CASのこれまでの経緯、連盟A-CASスキームの適用範囲、A-CAS、B-CAS区分別機能一覧、C-CAS ⇒ A-CASマイグレーションイメージのご説明などを頂きました。

第2部: 「モバイルアプリがもたらす放送事業の変化」
App Annie Japan株式会社
左:栗林 恵次郎様、右:上村 洋範様

メディア接触時間が、あらゆる世代において急速にモバイルアプリに移行しつつある状況の中で、世界最大手のモバイルアプリ市場データプロバイダーであるApp Annie様より「アプリ市場のトレンド」、「アプリにおける動画視聴の動向」、「動画アプリの収益化施策」などについて解説を頂きました。
生活者の可処分所得・時間は、より一層モバイルアプリを通して費やされており、今や多くの業界・企業において、モバイル戦略は、ビジネス戦略に直結。
また動画ストリーミングの海外・日本のジャンル別で拡大状況の説明が行われました。(3つのキーワード:①コンテンツ(コンテンツの魅力)、②LIVE配信、③パーソナライズ)さらに、もはやテレビとは「切っても切れない関係」に成長した収益率の高いモバイルアプリゲーム市場の動向などのご説明を頂きました。

第3部:「WOWOWの次世代戦略について」
株式会社WOWOW
経営戦略局長 大熊 和彦 様
大熊 和彦様

大熊 和彦様

中期経営計画について(2017年度~2020年度)基本骨子のご説明を頂きました。10年後のWOWOWの目指す姿が、卓越したクリエイターとエンターテインメントが集まる場へと進化した「総合エンターテインメント・メディアグループ」であり、そのための重点戦略として、①WOWOWらしさを貫いた徹底的なコンテンツの差別化、②マーケティング改革による顧客創造、③サービスの更なる高度化、④グループとしての成長、これらを推進していく、という内容のものでした。さらに、「放送/IP配信戦略」についての説明があり、グループ化したアクトビラ社を活用した「放送連携サービス」の説明、そして「ポータルサービス」のご紹介などが行われました。

開催日 平成29年8月3日(木)13:00開演-17:00終演(質疑応答含む)
会場 明治記念館(港区元赤坂)孔雀の間
参加社数 67社 138名 
(参考:平成28年4月7日開催の第三回は、48社 109名)

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一般社団法人衛星放送協会 7月記者会見

2017.06.30

2017年6月12日(月)、経団連会館において記者会見を開催致しました。

会長挨拶 和崎会長
和崎会長

和崎会長

今年度の重点的な取り組みは大きく2点あります。1点目は、来年12月に開始される4K・8K実用放送に向けた取り組みです。現在、各社が取り組みを進めるなか、具体的な課題も浮き彫りになってきました。4K・8K放送は、有料放送と無料放送、民放とNHKなど、異なるビジネスモデルが存在している他、受信環境についてもBS右旋と左旋、110度CS右旋と左旋で異なるため、そのことを国民が混乱しないようにしっかり伝えていく必要があります。当協会会員の衛星放送事業者が認定を受けたBS左旋、110度CS左旋においても普及対策は出遅れており、今後はスピード感を持って国や関係団体を巻き込みながら、円滑に来年の実用放送が開始されるよう働きかけて参ります。
2点目は、110度CS(右旋)のHD高画質化の実現に向けて、2017年度中に帯域再編を可能な限り進めたいと考えています。この実現において大きな意味を持つ12スロットでのHD放送については、今年5月に当協会会員50社と総務省の関係者、約160名が参加して「110度CS画質評価会」を開催しました。現行のHD16スロットとHD12スロットの画質を様々な映像で見比べ、参加した多くの方が12スロットでもHD放送は可能だと評価され、その結果を踏まえて110度CS高画質化を推進したいと考えています。この実現に向けたスケジュールとしては、2018年12月の4K・8K実用放送開始までには完了していることが重要であります。新たな帯域が公募制となれば、直ちに審査規準が示され、この秋にも公募の開始、そして年明け早々には事業者が認定されるスケジュールで進めないと、2018年12月までに間に合いません。そうしたことから、現在、関係各所に働きかけているところであります。

2016年度の有料・多チャンネル放送の契約数は1,361万件で、前年比7万件減という結果になりました。人気スポーツの動画配信サービスによる放送権利の囲い込みなど、メディア環境の激変を受けたことが主な要因と考えています。
放送のネット同時再送信については慎重な議論がされるなか、具体的なアクションを明示する局も出始めており、放送・IPを含めたメディア環境の変化はまだまだ続くことが予想されます。こうした環境の中で、有料・多チャンネル放送市場が成長する根幹となるのは、競合サービスとの差別化を図ったオリジナルコンテンツです。専門チャンネルならではの強みを生かして制作したこだわりのある番組をもっと増やしていくため、引き続き「衛星放送協会オリジナル番組アワード」等を通じて推進したいと思います。
本年度は、2018年の4K・8K実用放送に向けて右旋・左旋を問わず、4K・8K放送全体の啓蒙と普及活動を当協会が牽引しながら、協力会社や関係団体と連携して取り組んで参ります。

多チャンネル放送研究所 活動報告 音所長
音所長

音所長

2016年は『事業者予測調査 多チャンネル放送の現状と課題2015-2016』や『2016年多チャンネル放送実態調査報告書』の発表、ワークショップ、セミナーの開催を行いました。更に、12月にはこれまでの調査を基に市販のレポートとして『メディア融合時代到来!【コンテンツ至上主義】視聴者が「選ぶ」メディアは?』をサテマガBiより出版しました。今年も従来の研究を継続しつつ、多チャンネル放送の動向を把握・分析するために3つのワーキング(視聴者動向/将来予測/コンテンツ)で活動して参ります。直近の活動としては、『多チャンネル放送の現状と課題2016-2017』がこのほど完成し、近日中にHP上で発表する予定です。来年、当研究所は創立10周年を迎えるため、その準備も進めているところです。

衛星テレビ広告協議会CAB-J 活動報告 滝山CAB-J会長
滝山CAB-J会長

滝山CAB-J会長

2016年の総広告費は、前年比101.9%、6兆2,880億円と、5年連続で前年実績を上回りました。「マス4媒体」においては、地上波テレビと衛星メディア関連を合計した「テレビメディア広告費」は前年比101.7%、「ラジオ広告費」は同102.5%と、プラス成長だったものの、「新聞広告費」は同95.6%、「雑誌広告費」は同91.0%となり、合計では同99.6%と2年連続の減少となりました。一方、「インターネット広告費」は、モバイル広告市場の成長や動画広告、新しいアドテクノロジーを利用した広告配信の浸透などにより、前年比113.0%と3年連続の2桁成長となり総広告費をけん引しました。こうした中、「衛星メディア関連広告費」は、暦年で2年ぶりにBS、CS、CATVがそろって前年を上回り、前年比103.9%となりました。
2016年度(4月~3月末)のCS/BSペイテレビ広告売上は、健康食品、基礎化粧品などの通販系広告が伸長したほか、IT系、飲料、薬品広告が拡大し、3年ぶりに前年を上回り、前年比100.8%の209.5億円となり、5年連続で200億円台を達成しました。

第7回衛星放送協会オリジナル番組アワード 受賞作品の発表

「第7回衛星放送協会オリジナル番組アワード」大賞を除く受賞作品の発表を行いました。今回の応募数は「オリジナル番組賞」7部門で101作品、「オリジナル編成企画賞」は20企画で合計121にのぼり、前回よりも11上回る応募がありました。

受賞作品は以下のとおりです。

■オリジナル番組賞   作品名 チャンネル名 会社名
 ドラマ番組部門 最優秀賞 ドラマW 稲垣家の喪主 WOWOWプライム (株)WOWOW
 ドキュメンタリー
番組部門
最優秀賞 爆走風塵 
~中国・激変するトラック業界~
NHK BS1 日本放送協会
審査委員
特別賞
国際共同制作プロジェクト
格闘ゲームに生きる
WOWOWプライム (株)WOWOW
 情報番組・
教養番組部門
最優秀賞 英国男優のすべて
英国男優はこうして作られる
AXNミステリー (株)ミステリチャンネル
 中継番組部門 最優秀賞 ゆる~く深く!プロ野球 NHK BS1 日本放送協会
 バラエティ
番組部門
最優秀賞 KNOCH OUT(ノックアウト)
~競技クイズ日本一決定戦~
ファミリー劇場 (株)ファミリー劇場
審査委員
特別賞
めざせ!オリンピアン
“野獣”松本薫דビビり”15歳 
柔道 世界のワザと心を
本気で伝授!
NHK BS1 日本放送協会
 アニメ番組部門 最優秀賞 甦るノルシュテインの世界
#1「霧の中のハリネズミ編」
イマジカBS (株)IMAGICA TV
審査委員
特別賞
鬼平 時代劇専門チャンネル 日本映画放送(株)
 ミニ番組・
番組PR部門
最優秀賞 日本映画専門チャンネル
×サバイバルファミリー
矢口史靖の
「映画の常識、それほんと!?」
日本映画専門チャンネル 日本映画放送(株)
■オリジナル
編成企画賞
最優秀賞 追悼 演出家・蜷川幸雄 日本映画専門チャンネル 日本映画放送(株)
審査委員
特別賞
渥美清さん没後20年 
“寅さん”特集
NHK BSプレミアム 日本放送協会

 

受賞作品の講評 吉岡審査委員長
吉岡審査委員長

吉岡審査委員長

今回の審査は大変和やかに進みつつも、審査委員同士でたくさんの意見がぶつかり合いました。有料放送という新しい放送システムと、専門チャンネルの集まりであるだけに、それぞれが非常にシャープで、万人受けはしないであろう深い作品が増えてきたと感じました。今のテレビはたくさんの人に観てもらうとするあまり、尖った番組の制作が難しい時代ですが、CS・BSは表現する幅が広く、多様な実験が可能です。そのような検証実験を通じて、次の時代の映像表現者が現れることを期待しています。

 

 

左から、園田専務理事、岡本副会長、和崎会長、村山副会長、滝山CAB-J会長、音所長

左から、園田専務理事、岡本副会長、和崎会長、村山副会長、滝山CAB-J会長、音所長

開催日時 平成29年6月12日(月)
会場 経団連会館(大手町)

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青少年健全育成活動 ~テレビ番組の制作現場を探検しよう!~

2017.03.31

倫理委員会では、衛星放送協会が目指す青少年健全育成活動の一環として、小学生を対象に「番組制作現場体験会」を開催致しました。
6回目となる今回は、本企画にご賛同いただいた正会員、㈱東北新社・㈱スーパーネットワーク両社のご協力のもと、新宿区にある映像テクノアカデミアにて、スーパー!ドラマTVの日本語吹き替え版の収録現場見学と『サンダーバードARE GO』の吹き替え及びグリーンバックを用いた特撮体験を通して、子どもたちに番組制作現場を体験してもらうこととし、一般からの公募で選ばれた小学生5名が参加しました。

当日は、衛星放送協会から体験会の趣旨や衛星多チャンネル放送についての説明をし、続いてドラマの日本語吹き替え版を制作しているミキシングルームやナレーションブースを見学。ナレーション撮りの現場で使用されるヘッドフォンを実際に着用し、日頃は見ることが出来ないテレビ番組の内側の世界を体験しました。

 

その後、『サンダーバードARE GO』本編から、子どもたちが吹き替え体験をする一部のパートを鑑賞。これが完成版ではなく、隣のスタジオで声優さんたちが生で吹き替えをしていたとのタネ明かしがあり、トレーシー家の長男スコット(サンダーバード1号)役の浪川大輔氏が特別ゲストとして来ていることが告げられると思わず歓声が上がりました。
待ちに待った吹き替え体験。マイクの前に立ったものの、最初はどうしていいかよくわからず、なかなか大きい声が出せない子どもたちでしたが、何回か練習していくうちにみるみる上手になり、大人たちをびっくりさせていました。

 

最後に、グリーンバックを用いた特撮体験を行い、「体験会」は無事終了。終了の挨拶で子どもたちに「声優さんになりたいですか?」と質問したところ、ほぼ全員がなってみたいと答えていました。


【中央は声優の浪川大輔さん】

倫理委員会では、この貴重な体験を通じ、青少年が将来に向け大きな夢を持ち、職業人となる自覚を高めてもらうことができればと考えています。
今後も定期的に青少年育成活動を行ってまいりますので、会員各社のご協力をお願い致します。

開催日時 平成29年3月27日(月)10:45~13:30
場所 映像テクノアカデミア(東京都新宿区)
内容 スーパー!ドラマTV 収録見学と
海外ドラマ吹き替え・グリーンバックを用いた特撮体験
参加者 小学生5名(保護者同伴)

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衛星放送協会主催 第10回 人材育成セミナー

2017.03.22

第10回の人材育成セミナーは、『多チャンネル放送業界の未来に向けて~セルフ・イノベーションと若者マーケティング~』をテーマに開催されました。

今回のセミナーでは、社会に向けて自己改革を提唱し、様々な企業で改革を起こしてきた株式会社リアルディア代表取締役社長 前刀禎明氏、若者のブランディング研究の第一人者である博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー 原田曜平氏のお二人をお招きして、それぞれの専門領域で経験された見識を中心に講演いただきました。

前刀 禎明 氏

前刀 禎明 氏

第一部の講演では、まず前刀氏から「新たな価値を生むセルフ・イノベーション」をテーマにお話しいただきました。ご自身が日本法人の代表を務められたアップルで、当時は“オタクガジェット”に留まっていたアップル製品を“ファッションアイテム”としてリブランディングし、大ヒットに導いたiPod miniのマーケティング戦略の裏側など具体的な事例を挙げ、未来に向けて時代をリードする上で必要な「感性」についてお話し頂きました。特にエンターテイメントは、人の持っている欲求を探し当てることが肝要であり、そのためには五感を磨き、常に自己を革新していく必要性を話されました。

原田 曜平 氏

原田 曜平 氏

次に原田氏から「『若者』とはなにか?若者マーケティングで時代をつくる」をテーマにお話し頂きました。テレビ業界、車、お酒などに限らず、今やあらゆる業界で「若者の○○離れ」が悩みの種になっている中で、現代の若者の消費動向を以前と比べてどのように変化しているのかを知り、新たな販路の拡大を重要課題と認識している企業は数多くあるそうです。今の若者たちは「不景気(感)が前提」の時代に育ち、「ケータイ化とともに」生きてきた消費趣向や、若者を取り込む効果のあった事例など、『さとり世代』、『マイルドヤンキー』の流行語を産み出した原田氏ならではの研究を元に、現代の若者像とマーケティング戦略について話されました。

講演後には、「多チャンネル放送業界の未来に向けて」をテーマに、両講師によるディスカッションと質疑応答の時間を設けました。放送業界における若手人材の育成や、組織の活性化術に対する質問では、原田氏から「『さとり世代』であっても成長意欲の強い若者がいることから、会社は彼らの成長意欲を支援することが重要」とのアドバイスがありました。若者層の顧客獲得に関しては前刀氏から「デジタルメディアの音楽を聞き慣れたことにより、ライブの音が新鮮に感じるようになった」というご自身の体験を元に、技術革新や流行によって、廃れたものが見直される可能性があることや、地上波放送にはない内容の番組がOTT市場で支持を得ていることを例示し、「ターゲット層の欲求に応える番組作りを多チャンネル放送業界に期待している」と、更なる活性化に向けてご意見を伺いました。 講演後の懇親会では前刀氏が出席され、参加者からセミナーの感想や、仕事上の悩みについても耳を傾けられ、丁寧にお答え頂きました。 参加者は、講演と懇親会を通して、多チャンネル放送業界に必要な変化や在り方について、理解を深める有意義なセミナーとなりました。

   

講師 講演1.「新たな価値を生むセルフ・イノベーション」
株式会社リアルディア 代表取締役社長 前刀 禎明 氏
講演2.「『若者』とはなにか?若者マーケティングで時代をつくる」
博報堂ブランドデザイン若者研究所 リーダー 原田 曜平 氏
開催日時 平成29年3月1日(水)15:00~19:30
会場 明治記念館 孔雀の間
参加社数 22社 71名

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災害対策委員会~震災対策セミナー

2017.02.10

中澤幸介氏

中澤幸介氏

災害対策委員会主催により、震災対策セミナー「熊本地震で企業はどう動いた?~企業が今備えるべきリスクと対処策」が、2月3日(金)、危機管理とBCPの専門メディア『リスク対策.com』編集長の中澤幸介氏をお招きして、衛星放送協会にて開催されました。

今回は2度の震度7を観測した熊本地震発生時に地元企業が直面した現実に対して、その本社と現地双方が如何に対応したかを検証することでみえてきた“企業が今備えるべきリスクと対処策”について、総括する内容でした。

講演では、富士フィルム九州、イオン、地元工務店の具体的事例を題材に危機管理の基本とBCPの改善について分かりやすく解説していただきました。

講演のまとめとして中澤氏の「あらゆる危機は、予測することができれば予防しやすくなり、予防することができれば対応しやすくなります。逆に予測できなければ予防しにくくなり、予防しなければ対応が大変になります。」という言葉はまさに危機管理の原理原則といえます。常日頃から危機管理・BCPについて考え、シミュレーションを行って準備しておくことの重要性を再認識させられました。

最後の質疑応答では、参加者たちの熱心な質問に危機管理・BCPへの関心の高さがうかがえました。また、参加者全員に危機管理が1枚でわかるカレンダー「LIFE 2017」が配布され盛況のうち閉会となりました。

開催日時 平成29年2月3日(金)
会場 衛星放送協会会議室(赤坂)
参加社数 14社 31名

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2017年 年頭記者会見

2017.01.24

1月17日、衛星放送協会の賀詞交換会に先立ち年頭記者会見が、元赤坂の明治記念館にて開催されました。

年頭挨拶 和崎会長
和崎会長

和崎会長

この一年の衛星放送協会を取り巻く状況を振り返って見ますと、皆様ご存じの通り、8月にNHK、12月には一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)による、BS放送を通じた4K・8K試験放送がスタートし、10月から衛星基幹放送の業務認定の申請受付が行われるなど、4K・8K放送に向けて大きな前進が見られた1年でした。

一方、インターネットを使った映像配信市場では、多様化する利用者の生活スタイルを背景に、huluやNETFLIX、Amazonプライムといった従来のサービスに加え、スポナビライブ、DAZON(ダ・ゾーン)といった、人気スポーツコンテンツの生配信を軸としたサービスが開始され、映像配信業界は生き残りをかけた模索が続いています。同時に、こうした環境下でコンテンツの獲得競争や囲い込みによって放映権料の高騰が見られ、有料衛星放送業界としても、今後どのように向き合っていくか、難しい選択を迫られる1年でもありました。

放送と通信との融合では、昨年10月にNHKを含めた放送のネット同時再送信に向けた答申が総務大臣より提案され、12月には地上波民放の見逃しサービスTVERが500万ダウンロードを突破するなど、放送と通信のシームレス化に向けて、官民の動きが更に活性化を見せた年でもありました。

そして、今年に入り1月11日には電波監理審議会から衛星基幹放送の業務認定の答申が発表され、BS-右旋、BS-左旋、CS110度それぞれの認定社の概要が固まるなど、いよいよ2018年の実用放送に向けたロードマップが明確なものとなってきました。来るべき4K・8K時代を目の前にして放送ビジネスの在り方を具体的に見出し、どのように花を咲かせていくのか、関係者はその選択を迫られることになります。そのようなことから、今年は 次の時代に向けた鍵となる重要な年と捉えております。

次に、有料多チャンネル放送の契約者数をご報告します。
昨年11月末現在で、1,365万件となりました。ケーブルテレビ局を中心に数値を伸ばし、前年同期比ではプラス5万件となりましたが、平成27年度末(平成28年3月末)の数値が1,368万件でしたので、トータルでは今年度に入り微減の状況となっています。動画配信サービスの本格普及なで、環境はますます厳しさを増すことが予測されますが、引き続き年度末に向けて上昇トレンドを掴めるよう各社の皆さんと話しをしているところでございます。

さて、2017年の取り組みですが、先ほども申し上げたように、4K・8K放送は2018年の実用放送に向けたロードマップが具体的に動き始めています。総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」においても、これまで以上に衛星放送を巡る様々な議論が活発に行われている中で、衛星放送協会としても視聴環境分科会のほか、関係するワーキンググループに参加し、積極的な発信を行うと共に、情報を会員各社と共有するなど、引き続き活動して参ります。

一方、本格的な4K時代に入ろうとするなかで、110度CS放送のHD高画質化については喫緊の課題と捉えており、今年は是非、前進させたいと考えています。帯域の問題が絡むだけに、衛星放送協会だけで解決出来ることではありませんが、官民一体となって何としてもこの問題に解決の道筋を付けたいと考えております。

放送や通信を巡る環境が大変厳しくなるなかで、競合サービスとの差別化を図り、有料多チャンネル放送市場が成長する根幹を支えるのは、やはり番組であり、コンテンツだと確信しております。衛星放送協会は引き続き、会員社のオリジナル番組制作を推進するため「オリジナル番組アワード」の開催に力を注ぐ所存です。次回、「第7回衛星放送オリジナル番組アワード授賞式」は7月13日(木)に開催いたします。

協会の付属機関である、「多チャンネル放送研究所」は、中・長期的な視点で有料多チャンネル放送の将来像を予測し、その価値を高めるために調査、分析を実施して参りました。そして昨年 12月には、その活動の成果として、『メディア融合時代到来!【コンテンツ至上主義】視聴者が「選ぶ」メディアは?』のタイトルで書籍を出版いたしました。
また、衛星テレビ広告協議会(CAB-J)は、「機械式ペイテレビ接触率調査」を実施し、そのデータは、新たな広告施策に活用されています。これら2つの機関は衛星放送協会が今後の施策を推進するうえで重要な役割を担っていくと考えおりますので、引き続きご理解とご支援をお願いいたします。

衛星放送協会は2017年も、世界をリードする次世代放送サービスの実現に向けて、制度面の支援や、オリジナルコンテンツ制作の推進などを通じ、その一翼を担いたいと考えております。
是非皆さまのご支援ご贔屓を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

オリジナル番組アワード審査委員長挨拶 吉岡 忍審査委員長
吉岡 忍審査委員長

吉岡 忍審査委員長

オリジナル番組アワードはこれまで6回続けて参りましたが、前回も世の中の動きに切り込み、そして鋭く表現した作品が各部門で集まっておりました。審査員一同、こういった作品を審査しながら、大変ワクワクする感じを持ちました。ただ、アニメ部門においては、これだけ日本のマンガ、アニメ分野が凄いと言われながら、少し低調さが目立ちました。是非各チャンネルがこの部門にも力を入れて、様々な作品を作る状況が生まれて欲しいと思います。
昨年のアワード大賞受賞作品「大相撲いぶし銀列伝」では、相撲という分野で、負けた人の言葉が持つ力を引き出した作品のセンスを高く評価しました。次回のアワーでも、それぞれの製作者の思いやセンスが込められた作品が、たくさん集まることを期待しております。

今年は、これまでと発表の仕方が変わります。最終審査は6月の上旬に行われ、各部門の最優秀賞は審査直後6月12日(月)に発表する予定です。ただし、アワード大賞については、7月13日(木)の授賞式で発表します。たくさんのすばらしい作品が集まることを期待致しております。

多チャンネル放送研究所 活動報告 音所長
音所長

音所長

昨年の活動と今年の活動方針についてご報告致します。
昨年は、「将来予測」、「コンテンツ分析」、「視聴者分析」3つのワーキンググループに分かれて活動を行い、多チャンネル放送研究所の定例調査「多チャンネル放送の実態調査」、「事業予測調査」、「視聴者調査」を実施し、随時報告させて頂きました。その成果として、これまで蓄積した数年のデータを含めた形で、『メディア融合時代到来!【コンテンツ至上主義】視聴者が「選ぶ」メディアは?』という本を12月に出版させていただきました。多チャンネル放送研究所がこれまで行ってきた調査結果、調査データを踏まえて、随時報告させて頂いた、多チャンネル放送のあり方をロングレンジで取りまとめております。是非お目通し頂ければと思います。

今年の調査研究は、3ワーキングを継続して活動を進めますが、特に今のメディア状況は非常に大きく揺らいでおります。ロングレンジで調査データを踏まえ、様々なデータをフィードバックさせて頂くと共に、多チャンネル放送研究所が設立されて10周年となる2018年に向けて、やや長い視点で多チャンネル放送に関するデータ整理と問題提起が出来ればと考えております。是非ともご支援のほど宜しくお願い致します。

衛星テレビ広告協議会CAB-J 活動報告 園田専務理事
園田専務理事

園田専務理事

CAB-J会長の滝山が、業務の都合で欠席のため、私が代理でCS/BSペイテレビ広告の状況についてご報告させて頂きます。

今年度上半期(平成28年4月~同年9月)のCS/BSペイテレビ広告売上は105億8千万円と、前年同期の実績を5.7%上回る数字となりました。対前年同期で2年ぶりの増収となります。これは、イベント、番組等と連動した企画広告が堅調だったことが主な要因です。メディアの皆様やアドバタイザー・広告会社の皆様のお力添えを頂きながら、平成28年度通期においても昨年度の207億8千万円を上回ることを目指し、CAB-J会員各社においては積極的な営業活動を行っております。

今年度の活動状況ですが、昨年の10月と11月に、「CAB-Jセミナー」を、例年開催しております東京・大阪に加え、2年ぶりに福岡においても開催致しました。会場ではチャンネル各社が専門性を活かして実施したイベントや番組連動の販促事例や広告事例、更にはCS/BSペイテレビをご利用頂いたアドバタイザー様の生の声などを映像でご紹介しました。更にレスポンス系の広告出稿が多い福岡では、福岡限定のスペシャル版として、通販広告事例やテレビ通販ユーザー分析のブロックを追加し、参加者の皆様に大変好評を頂きました。
今年も、それぞれの地域の特性を考慮しながら、内容をバージョンアップさせて、皆様に更にお役立て頂けるセミナーとして開催したいと考えております。

また、これまでCS/BSペイテレビの価値をよりわかり易くお伝えすべく、接触率として開示しておりました「機械式ペイテレビ接触率調査」の調査結果を、昨年2月から「推計接触世帯数、接触人数」で表記することとし、これに連動した新しいセグメントとして「エグゼクティブ世帯」や「子育て世代」などの5つの世帯ターゲットと、「トレンド先取り層」や「輸入車関心層」といった14の個人ターゲットを新たに導入致しました。そして、CAB-Jのホームページを通じて毎回調査結果を発表しながら、専門性の高い番組編成で、多様な嗜好に応えることの出来るCS/BSペイテレビのターゲットメディアとしての魅力を発信させて頂いております。

これからも「機械式ペイテレビ接触率調査」データのクオリティを向上させると共に、様々な角度から分析を行いながら、アドバタイザー・広告会社の皆様に対してより実効性の高いご提案をしていくことに注力して参ります。

本年もCS/BSペイテレビの広告価値の向上を目指し活動をして参りますCAB-Jに、メディアの皆様のご支援・ご協力を頂けます様よろしくお願いいたします。

左から、園田専務理事、井川副会長、和崎会長、岡本副会長、村山副会長、音多チャンネル放送研究所所長

左から、園田専務理事、井川副会長、和崎会長、岡本副会長、村山副会長、音多チャンネル放送研究所所長

開催日時 平成29年1月17日(火) 11時~11時40分
会場 明治記念館 千歳の間

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多チャンネル放送研究所 第8回発表会まとめ

2017.01.17

多チャンネル放送研究所では毎年秋に、一年間の活動を報告する発表会を行っていますが、第8回目となる2016年の発表会は12月7日(水)に明治記念館で開催いたしました。

発表会では研究所の3つのWGがそれぞれの研究内容を報告し、それを受けて所長の音 好宏から「メディア激変のなかで、多チャンネルはどう生きる」と題して、まとめと問題提起をいたしました。概要は次の通りです。

■ ユーザー分析WG
清正 徹ユーザー分析WG主査

清正 徹ユーザー分析WG主査

有料映像サービスについて2013年度より調査を行っている。
昨年度の調査ではファミリー層に対して有料動画配信サービスの認識や理解が薄いうちに獲得していく必要があるという結果に至ったことを受け、2016年は「未加入のファミリー層にどのようなメッセージを届け、どのようなサービスの提供が加入の後押しになるかを把握し、新規獲得増に資するデータとする」ことを目的に調査を実施した。

ボリューム把握のため定量調査を行ったところ、見たいコンテンツがある時に有料サービスを利用している「潜在加入層」が24.9%、「多チャンネル放送加入のファミリー層」は17.4%であった。
この中から「潜在加入層」に加入させるヒントを得るためFGIを行った。
対象者を集めたところ2つのタイプに分かれ「家族の多様性」があることもわかった。
『「個」の生活が確立されており、TV視聴もパーソナルな家庭』では、加入検討は個人のモチベーションで行われ自分の財布からの支払い。『一緒に視聴、もしくは互いの視聴番組を把握している家庭』では、家計からの支払いであった。また加入者の多くは、観たいコンテンツの視聴は加入しているサービスのみと認識しており、「レンタルよりお得」と意識している現在は高いロイヤリティが期待出来るが、有料動画配信サービスを認識すると価格メリットで切り替えるリスクがある一方、特定コンテンツ目的の加入者はチャンネル数が多いことがベネフィットではなく「コストパフォーマンスが悪い」と感じていることも伺えた。但し、「生放送(スポーツ)」や「録画してコレクションできる」というベネフィットは非常に魅力的なため、継続意向はあった。

「潜在加入層」では多チャンネル放送に興味はあるが「観たいコンテンツが無い」、「毎月3~4千円前後かかるのは高い」、WEBサイトでは「何が観られるか分からない」、「価格や内容が分からない」ことが原因で断念したという意見もあった。この「潜在加入層」と「多チャンネル放送加入層」について定量調査で収入を確認したところ、「潜在加入層」の世帯年収は加入層より100万円ほど下回った。価格感では「潜在加入層」の月額許容支払い金額は、加入層を下回るがファミリーの中では小学生以下の子どもあり家族が有料コンテンツへの許容金額が高かった。

加入のきっかけは切実なニーズの偶然の発生によることも見受けられた。戦略的な施策により機会を増やす必要があり、「観たいコンテンツを偶然見つけて加入」を偶然ではなく、もっと幅広く訴求、あるいは類似のコンテンツを多く用意することや、プラットフォームのWEBサイトで「自分が見たい情報以外がTOPに表示され、困惑する」ことを避けてすぐに加入できる仕組みが必要であることもわかった。
「潜在加入層」の月額許容支払い金額は、「多チャンネル放送加入層」を下回っており、コストパフォーマンスが重視されていくと思われる。選択制商品などで、加入意向者が見たいchに加え家族の見たいchも選択できるなど、家族を説得しやすい仕組みと価格、お試しなどでOTTサービスよりも先に知らせ、網羅性をアピールすること、Exclusiveでファンを唸らせるようなコンテンツを用意することなどが求められる。

■ 将来像予測WG
藤島 克之将来像予測WG主査

藤島 克之将来像予測WG主査

多チャンネル放送事業者の収支状況について、収入では中規模事業者の売上が増加傾向となっており、費用面では番組費の割合が増加しており、コンテンツ強化の傾向が伺える。これらを受けた収支状況としては、費用面の増加があるものの、昨年比で56.2%が増益と回答している。加入者の傾向としては、110サービスは微増傾向、124/8は毎年約5万件の減少傾向、CATVは650万件前後で推移、IPTVは昨年まで90万前後と微増傾向であったが伸びの鈍化が見受けられ横ばいという結果であった。

経営課題として、4KやOTT動画配信中心に挙げている企業が多く、なかでも動画配信への注目は高まっており、配信の実施状況でみても、自社PFでは検討段階を含め50%前後が実施の方向であるが、他社PFでは7割ほどに上る。4Kについては、現状では判断がつきにくい状況にあり、どのように関わるかというスタンスは、自社で参画するが15%程度、番組供給として関わると回答した事業者が50%と自社での参画はまだまだハードルの高さがうかがえる。2020年時点での放送サービスの状況については、4K8Kといった高画質化はまだ限定的で、オンデマンドやタイムシフト視聴が普及するとの予測が多くを占めた。

OTT市場をどのようにみるか 映像ソフト市場動向としては、全体で約5,000億円ほどで、昨年と大きな変化はないが、そのうち有料配信は、614億から961億円と増加しており、セルやレンタルの割合が相対的に低下しており、今後の予測でみても動画配信市場は堅調に伸びていくと予想されている。主に利用している有料動画配信サービスとしては、アマゾンプライム、hulu、ニコニコ動画の利用率が高く、視聴コンテンツはきっかけとともに映画、ドラマ、アニメの視聴割合が高くなっている。

昨年の配信事業者へのヒアリングに続き、放送プラットフォーム(以下、PF)は、配信サービスについてスカパーとひかりTVにヒアリングを行った。放送PFは放送ノウハウや販売チャンネルを持つことが配信サービス展開においても優位に働くと捉えているものの、配信系の動きと総合的に捉えると放送と配信はそれぞれのサービスを拡充する過程で徐々に類似化し、サービスの垣根を超えて融合していくと考えられる。その結果としてPFが乱立する環境下、今後はコンテンツや料金、複合的な付随サービスの独自色を出していくことで差別化を図ることが重要となってくる。

■ コンテンツ論WG
神崎 義久コンテンツ論WG主査

神崎 義久コンテンツ論WG主査

実態調査の結果から自主制作番組比率は全体の平均値が34.2%で前年比で約2ポイント増加し、オリジナル番組比率が過去最高の値となった。外部調達番組の比率は昨年同様の傾向で2極化が進む中、全体的には費用の伸びに対し、放送時間の伸びが上がっており、調達費用としては低廉化が伺える。
オリジナル番組の制作は89ch中84.3%が制作していると回答し、その目的としては独自性、専門性の開発という理由が多く、番組販売や配信展開を見据えた動きが昨年より大幅に増えた。オリジナル番組制作上の課題としては、昨年同様、番組制作コストの捻出が最も多く、その解決策としてはスカパー、CATV局との連携や広告スポンサーへのセールスの強化等の回答が多数を占め、投下費用回収の解決策は、昨年同様マルチデバイスなどでの配信先の拡大が最も多く、その比重の傾向は年々高くなっている。

OTTサービスの台頭による影響として、サービスウィンドウの細分化による権利の複雑化、コンテンツ獲得競争激化によるコストの高騰などの回答が多く寄せられ、それらを踏まえた方向性としては独占コンテンツの強化、付加価値の創出など長期的な活性化を目指した「差別化」とVODやOTTを視野に入れた編成戦略など「全体戦略の強化」が今後の方向性として挙げられた。配信サービスとの向き合い方は、競合と捉えて「オリジナル番組の強化」や「放送の利便性をアピールする」といった対策を打つことが重要と回答がある一方で、視聴誘導メディアと捉えて共存という考え方のもと、「共同調達による高騰する権利の緩和」、「プロモーションとしての活用」といったすみ分け可能といった回答もあった。4K・8Kについては、ノウハウの蓄積や宣伝の強化を目的とし、各PFやCATV局との連携により制作供給体制を整えて取り組む方向ではあるが、制作費や費用対効果といった課題も残っている状況である。

昨年度の提言として4Kの普及見通し視聴環境変化の考察から、4K高画質化とマルチデバイス化・VOD化は並行して進める必要があるとお伝えしたが、今年の対応状況として、オリジナル番組の強化が進み、配信PFとの関係強化の動きが見られた。権利処理面など課題もあるが、高いクオリティを維持した、安心感、信頼感のあるコンテンツを継続的に生み出していける体制を持っていることが放送事業者としての強みであり、それらを意識した活動をしていくことが肝要である。

■ メディア激変のなかで、多チャンネルはどう生きる
音 好宏 所長

音 好宏 所長

昨年の動画配信元年から動画配信への認知度は大きく変化したこの1年であったが本日の各WGの報告を総括しながら整理したい。ユーザー分析WGでは、今まで以上に量的、質的な分析を行ったが、OTTの急速な浸透が進み、家族視聴や高齢者は多チャンネル放送、比較的若い層や単身層にOTTが浸透している、家庭の多様化にあわせた形でのチャンネル開発が重要になってくるとの見方が報告された。

将来像予測WGでは、将来像加入者予測の観点で、スカパーは微増、スカパープレミアムはやや減少、CATVやIPは横ばいという見方である。経営課題としては、配信がキーワードとなっており、配信と放送をセットで考えることが重要。実用放送開始が2018年でもあり4Kにおいてはまだ様子見の面もあるが、放送の高度化の中で、4Kが市場をどのように開拓するのかという点と昨年から今年にかけてプレイヤー台頭によるOTTの動きがより目立っていることに、業界全体の関心が集まっている。OTTへのインタビュー調査では、SVODが注目されている。中でも突出して注目を集めているアマゾン、HULU、ニコニコが牽引している一方で、まだ足踏み段階のものもあり、2極化が早くも進んでいる。また、映画・ドラマ・アニメといったジャンルが牽引していることも如実に表れている。今後は有料多チャンネル放送と配信をどのようにハーモニーさせていくのかが大きな課題となってきている。

このような状況下、放送PFは機能面では、放送と配信が融合したものにならざるを得ない。OTTが急に増えたことによりPF同士のコンテンツの囲い込み、サービスや価格競争が生じており、コンテンツが市場の中で優位性を持つ状況になっている。つまり、コンジット(回路)とコンテンツのぶつかり合いの中で、これまでの制度論と同様、コンジットがコンテンツを支配し、コンジットが強かった時代から、強いコンテンツが市場において力を持つ傾向がより強まるのではないかと考えられる。その傾向は先ほどのコンテンツ論WGの発表の中で示したように、コンテンツ重視の傾向が強まり、以前以上に自主制作、オリジナルコンテンツ重視の傾向となっている。しかしながら課題も多く、制作環境、人材や投下資本の確保などがあり、それらをどのように解決しながら進めるかが焦点となるであろう。

これらのWGの報告を受けて、メディア利用を巡る変化を考えると人口は減る、日本経済の急速な回復は見込めないなか、端末の多様化も進むことも考えられ、WEBによる無料動画の普及も大きな影響力を持つ。今の若者は、スマホを横にして動画を見るのではなく、縦でコミュニケーションツールとして扱うという傾向にあり、放送型の映像コンテンツがうまく受け入れられるのか、という視点での検討も必要であろう。

多チャンネル放送の課題としては、まず加入者の伸び悩みがある。また、4Kへの取り組みや、多チャンネル放送事業者の半数が「積極的」としつつも、もう半数が「競合」との見方をしている動画配信サービスへの向き合いなどがあげられる。放送サービス自体が動画配信をひとつのメルクマールとして考えると、いま放送は、その高度化とともに新たな転換期を迎えていると言える。放送ビジネスの環境変化をどのようにとらえていくのか、動画への接触の変化をどのように追い風にしてくのかを改めて精緻に考える必要がある。20年前から言われ続けている環境の変化に、これまでは、ある種、対症療法でしのいできた、または、しのげてきた感があるが、それも長続きしないのではないか。同じく担い手であるケーブル事業者の例をみると、新たな付加サービスを加えながらビジネスの高度化を展開。インフラ的な役割が強まるなか、放送事業収入は頭打ちとなっている。
ただ、近年の動きとして、コミュニティチャンネルを活用した地域コンテンツの強化、バラバラだった地域コンテンツを統合する動き、PFの整備などを長い目でみたプランとして推進している。加えて女性の活躍、ジャーナリズムの再考といったことも含め、ソフト部分をより強化する動きが進んでおり、4Kの取り組みにも積極的である。加入者が伸び悩む頭打ちの中、それらをクリアするため取り入れようとしている。重要なことは視聴者に目に見える形で便益が示されなければならず、コンジット(回路)の支配力が揺らぐ中で、利用者に支持されるサービスでなければ、市場には受け入れられない歴史もある。

昨今、「テレビの地殻変動」という言葉がよく使われているが、問われているのは自分たちの立ち位置、アイデンティティは何かということではないだろうか。今回のWG報告は昨年とは順序を変え、ユーザーの分析を行い、事業者の将来予測&OTTヒアリングをし、その結果やはりコンテンツを重視することが大事というプロセスでおこなった。

アメリカのネットフリックスが「ハウスオブカード」でエミー賞を受賞し、強いコンテンツをジャンピングボートにして、世間にその名を知らしめた例や、アジア・コンテンツに中国の投資家が積極的に投資をしている例などの成功例は参考にできる。多チャンネル放送のコンテンツにおいては、制作費、人材の問題など課題はあるが、それらの課題を乗り越えるような多チャンネル放送ならではのコンテンツを積極的に排出していくことが求められているように思う。

広告モデルによる放送ビジネスでは、マクロ経済連動型のゼロサム市場であり、その拡大には国内市場だけでは難しいところもあるが、プラスサムとなるような海外市場との連動、規模の経済による効率化という選択肢、強いコンテンツによってコンジットの枠組みを超えて、新たな形での人材、権利、資金調達の確保なども一考の余地はある。また、日本は放送コンテンツの流通ルートが、系列によって縛られがちであることや、多チャンネル放送の独自コンテンツの育て方など、再検証してみる価値があるのではないか。他方で、TBSが展開している「デジコン6」のような試みもある。アジアのコンテンツを日本ではどのように展開できるのか、また、ローカル・コンテンツや国際共同制作の可能性などでも、新たなビジネスチャンスが作れるのではないかなど、その可能性を検討すべきだろう。改めて、多チャンネル放送らしいコンテンツとは何なのか。加えて、そのパワーをより大きくするためにはどうすればよいのかを考える時に来ている。今回の報告が、多チャンネル放送市場のさらなる開拓のビジネスにつながるヒントになればと思う。

開催日時 平成28年12月7日(水)
会場 明治記念館(港区元赤坂)
参加社数 46社 96名

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