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活動報告

多チャンネル放送研究所 第8回発表会まとめ

2017/1/17

多チャンネル放送研究所では毎年秋に、一年間の活動を報告する発表会を行っていますが、第8回目となる2016年の発表会は12月7日(水)に明治記念館で開催いたしました。

発表会では研究所の3つのWGがそれぞれの研究内容を報告し、それを受けて所長の音 好宏から「メディア激変のなかで、多チャンネルはどう生きる」と題して、まとめと問題提起をいたしました。概要は次の通りです。

■ ユーザー分析WG
清正 徹ユーザー分析WG主査

清正 徹ユーザー分析WG主査

有料映像サービスについて2013年度より調査を行っている。
昨年度の調査ではファミリー層に対して有料動画配信サービスの認識や理解が薄いうちに獲得していく必要があるという結果に至ったことを受け、2016年は「未加入のファミリー層にどのようなメッセージを届け、どのようなサービスの提供が加入の後押しになるかを把握し、新規獲得増に資するデータとする」ことを目的に調査を実施した。

ボリューム把握のため定量調査を行ったところ、見たいコンテンツがある時に有料サービスを利用している「潜在加入層」が24.9%、「多チャンネル放送加入のファミリー層」は17.4%であった。
この中から「潜在加入層」に加入させるヒントを得るためFGIを行った。
対象者を集めたところ2つのタイプに分かれ「家族の多様性」があることもわかった。
『「個」の生活が確立されており、TV視聴もパーソナルな家庭』では、加入検討は個人のモチベーションで行われ自分の財布からの支払い。『一緒に視聴、もしくは互いの視聴番組を把握している家庭』では、家計からの支払いであった。また加入者の多くは、観たいコンテンツの視聴は加入しているサービスのみと認識しており、「レンタルよりお得」と意識している現在は高いロイヤリティが期待出来るが、有料動画配信サービスを認識すると価格メリットで切り替えるリスクがある一方、特定コンテンツ目的の加入者はチャンネル数が多いことがベネフィットではなく「コストパフォーマンスが悪い」と感じていることも伺えた。但し、「生放送(スポーツ)」や「録画してコレクションできる」というベネフィットは非常に魅力的なため、継続意向はあった。

「潜在加入層」では多チャンネル放送に興味はあるが「観たいコンテンツが無い」、「毎月3~4千円前後かかるのは高い」、WEBサイトでは「何が観られるか分からない」、「価格や内容が分からない」ことが原因で断念したという意見もあった。この「潜在加入層」と「多チャンネル放送加入層」について定量調査で収入を確認したところ、「潜在加入層」の世帯年収は加入層より100万円ほど下回った。価格感では「潜在加入層」の月額許容支払い金額は、加入層を下回るがファミリーの中では小学生以下の子どもあり家族が有料コンテンツへの許容金額が高かった。

加入のきっかけは切実なニーズの偶然の発生によることも見受けられた。戦略的な施策により機会を増やす必要があり、「観たいコンテンツを偶然見つけて加入」を偶然ではなく、もっと幅広く訴求、あるいは類似のコンテンツを多く用意することや、プラットフォームのWEBサイトで「自分が見たい情報以外がTOPに表示され、困惑する」ことを避けてすぐに加入できる仕組みが必要であることもわかった。
「潜在加入層」の月額許容支払い金額は、「多チャンネル放送加入層」を下回っており、コストパフォーマンスが重視されていくと思われる。選択制商品などで、加入意向者が見たいchに加え家族の見たいchも選択できるなど、家族を説得しやすい仕組みと価格、お試しなどでOTTサービスよりも先に知らせ、網羅性をアピールすること、Exclusiveでファンを唸らせるようなコンテンツを用意することなどが求められる。

■ 将来像予測WG
藤島 克之将来像予測WG主査

藤島 克之将来像予測WG主査

多チャンネル放送事業者の収支状況について、収入では中規模事業者の売上が増加傾向となっており、費用面では番組費の割合が増加しており、コンテンツ強化の傾向が伺える。これらを受けた収支状況としては、費用面の増加があるものの、昨年比で56.2%が増益と回答している。加入者の傾向としては、110サービスは微増傾向、124/8は毎年約5万件の減少傾向、CATVは650万件前後で推移、IPTVは昨年まで90万前後と微増傾向であったが伸びの鈍化が見受けられ横ばいという結果であった。

経営課題として、4KやOTT動画配信中心に挙げている企業が多く、なかでも動画配信への注目は高まっており、配信の実施状況でみても、自社PFでは検討段階を含め50%前後が実施の方向であるが、他社PFでは7割ほどに上る。4Kについては、現状では判断がつきにくい状況にあり、どのように関わるかというスタンスは、自社で参画するが15%程度、番組供給として関わると回答した事業者が50%と自社での参画はまだまだハードルの高さがうかがえる。2020年時点での放送サービスの状況については、4K8Kといった高画質化はまだ限定的で、オンデマンドやタイムシフト視聴が普及するとの予測が多くを占めた。

OTT市場をどのようにみるか 映像ソフト市場動向としては、全体で約5,000億円ほどで、昨年と大きな変化はないが、そのうち有料配信は、614億から961億円と増加しており、セルやレンタルの割合が相対的に低下しており、今後の予測でみても動画配信市場は堅調に伸びていくと予想されている。主に利用している有料動画配信サービスとしては、アマゾンプライム、hulu、ニコニコ動画の利用率が高く、視聴コンテンツはきっかけとともに映画、ドラマ、アニメの視聴割合が高くなっている。

昨年の配信事業者へのヒアリングに続き、放送プラットフォーム(以下、PF)は、配信サービスについてスカパーとひかりTVにヒアリングを行った。放送PFは放送ノウハウや販売チャンネルを持つことが配信サービス展開においても優位に働くと捉えているものの、配信系の動きと総合的に捉えると放送と配信はそれぞれのサービスを拡充する過程で徐々に類似化し、サービスの垣根を超えて融合していくと考えられる。その結果としてPFが乱立する環境下、今後はコンテンツや料金、複合的な付随サービスの独自色を出していくことで差別化を図ることが重要となってくる。

■ コンテンツ論WG
神崎 義久コンテンツ論WG主査

神崎 義久コンテンツ論WG主査

実態調査の結果から自主制作番組比率は全体の平均値が34.2%で前年比で約2ポイント増加し、オリジナル番組比率が過去最高の値となった。外部調達番組の比率は昨年同様の傾向で2極化が進む中、全体的には費用の伸びに対し、放送時間の伸びが上がっており、調達費用としては低廉化が伺える。
オリジナル番組の制作は89ch中84.3%が制作していると回答し、その目的としては独自性、専門性の開発という理由が多く、番組販売や配信展開を見据えた動きが昨年より大幅に増えた。オリジナル番組制作上の課題としては、昨年同様、番組制作コストの捻出が最も多く、その解決策としてはスカパー、CATV局との連携や広告スポンサーへのセールスの強化等の回答が多数を占め、投下費用回収の解決策は、昨年同様マルチデバイスなどでの配信先の拡大が最も多く、その比重の傾向は年々高くなっている。

OTTサービスの台頭による影響として、サービスウィンドウの細分化による権利の複雑化、コンテンツ獲得競争激化によるコストの高騰などの回答が多く寄せられ、それらを踏まえた方向性としては独占コンテンツの強化、付加価値の創出など長期的な活性化を目指した「差別化」とVODやOTTを視野に入れた編成戦略など「全体戦略の強化」が今後の方向性として挙げられた。配信サービスとの向き合い方は、競合と捉えて「オリジナル番組の強化」や「放送の利便性をアピールする」といった対策を打つことが重要と回答がある一方で、視聴誘導メディアと捉えて共存という考え方のもと、「共同調達による高騰する権利の緩和」、「プロモーションとしての活用」といったすみ分け可能といった回答もあった。4K・8Kについては、ノウハウの蓄積や宣伝の強化を目的とし、各PFやCATV局との連携により制作供給体制を整えて取り組む方向ではあるが、制作費や費用対効果といった課題も残っている状況である。

昨年度の提言として4Kの普及見通し視聴環境変化の考察から、4K高画質化とマルチデバイス化・VOD化は並行して進める必要があるとお伝えしたが、今年の対応状況として、オリジナル番組の強化が進み、配信PFとの関係強化の動きが見られた。権利処理面など課題もあるが、高いクオリティを維持した、安心感、信頼感のあるコンテンツを継続的に生み出していける体制を持っていることが放送事業者としての強みであり、それらを意識した活動をしていくことが肝要である。

■ メディア激変のなかで、多チャンネルはどう生きる
音 好宏 所長

音 好宏 所長

昨年の動画配信元年から動画配信への認知度は大きく変化したこの1年であったが本日の各WGの報告を総括しながら整理したい。ユーザー分析WGでは、今まで以上に量的、質的な分析を行ったが、OTTの急速な浸透が進み、家族視聴や高齢者は多チャンネル放送、比較的若い層や単身層にOTTが浸透している、家庭の多様化にあわせた形でのチャンネル開発が重要になってくるとの見方が報告された。

将来像予測WGでは、将来像加入者予測の観点で、スカパーは微増、スカパープレミアムはやや減少、CATVやIPは横ばいという見方である。経営課題としては、配信がキーワードとなっており、配信と放送をセットで考えることが重要。実用放送開始が2018年でもあり4Kにおいてはまだ様子見の面もあるが、放送の高度化の中で、4Kが市場をどのように開拓するのかという点と昨年から今年にかけてプレイヤー台頭によるOTTの動きがより目立っていることに、業界全体の関心が集まっている。OTTへのインタビュー調査では、SVODが注目されている。中でも突出して注目を集めているアマゾン、HULU、ニコニコが牽引している一方で、まだ足踏み段階のものもあり、2極化が早くも進んでいる。また、映画・ドラマ・アニメといったジャンルが牽引していることも如実に表れている。今後は有料多チャンネル放送と配信をどのようにハーモニーさせていくのかが大きな課題となってきている。

このような状況下、放送PFは機能面では、放送と配信が融合したものにならざるを得ない。OTTが急に増えたことによりPF同士のコンテンツの囲い込み、サービスや価格競争が生じており、コンテンツが市場の中で優位性を持つ状況になっている。つまり、コンジット(回路)とコンテンツのぶつかり合いの中で、これまでの制度論と同様、コンジットがコンテンツを支配し、コンジットが強かった時代から、強いコンテンツが市場において力を持つ傾向がより強まるのではないかと考えられる。その傾向は先ほどのコンテンツ論WGの発表の中で示したように、コンテンツ重視の傾向が強まり、以前以上に自主制作、オリジナルコンテンツ重視の傾向となっている。しかしながら課題も多く、制作環境、人材や投下資本の確保などがあり、それらをどのように解決しながら進めるかが焦点となるであろう。

これらのWGの報告を受けて、メディア利用を巡る変化を考えると人口は減る、日本経済の急速な回復は見込めないなか、端末の多様化も進むことも考えられ、WEBによる無料動画の普及も大きな影響力を持つ。今の若者は、スマホを横にして動画を見るのではなく、縦でコミュニケーションツールとして扱うという傾向にあり、放送型の映像コンテンツがうまく受け入れられるのか、という視点での検討も必要であろう。

多チャンネル放送の課題としては、まず加入者の伸び悩みがある。また、4Kへの取り組みや、多チャンネル放送事業者の半数が「積極的」としつつも、もう半数が「競合」との見方をしている動画配信サービスへの向き合いなどがあげられる。放送サービス自体が動画配信をひとつのメルクマールとして考えると、いま放送は、その高度化とともに新たな転換期を迎えていると言える。放送ビジネスの環境変化をどのようにとらえていくのか、動画への接触の変化をどのように追い風にしてくのかを改めて精緻に考える必要がある。20年前から言われ続けている環境の変化に、これまでは、ある種、対症療法でしのいできた、または、しのげてきた感があるが、それも長続きしないのではないか。同じく担い手であるケーブル事業者の例をみると、新たな付加サービスを加えながらビジネスの高度化を展開。インフラ的な役割が強まるなか、放送事業収入は頭打ちとなっている。
ただ、近年の動きとして、コミュニティチャンネルを活用した地域コンテンツの強化、バラバラだった地域コンテンツを統合する動き、PFの整備などを長い目でみたプランとして推進している。加えて女性の活躍、ジャーナリズムの再考といったことも含め、ソフト部分をより強化する動きが進んでおり、4Kの取り組みにも積極的である。加入者が伸び悩む頭打ちの中、それらをクリアするため取り入れようとしている。重要なことは視聴者に目に見える形で便益が示されなければならず、コンジット(回路)の支配力が揺らぐ中で、利用者に支持されるサービスでなければ、市場には受け入れられない歴史もある。

昨今、「テレビの地殻変動」という言葉がよく使われているが、問われているのは自分たちの立ち位置、アイデンティティは何かということではないだろうか。今回のWG報告は昨年とは順序を変え、ユーザーの分析を行い、事業者の将来予測&OTTヒアリングをし、その結果やはりコンテンツを重視することが大事というプロセスでおこなった。

アメリカのネットフリックスが「ハウスオブカード」でエミー賞を受賞し、強いコンテンツをジャンピングボートにして、世間にその名を知らしめた例や、アジア・コンテンツに中国の投資家が積極的に投資をしている例などの成功例は参考にできる。多チャンネル放送のコンテンツにおいては、制作費、人材の問題など課題はあるが、それらの課題を乗り越えるような多チャンネル放送ならではのコンテンツを積極的に排出していくことが求められているように思う。

広告モデルによる放送ビジネスでは、マクロ経済連動型のゼロサム市場であり、その拡大には国内市場だけでは難しいところもあるが、プラスサムとなるような海外市場との連動、規模の経済による効率化という選択肢、強いコンテンツによってコンジットの枠組みを超えて、新たな形での人材、権利、資金調達の確保なども一考の余地はある。また、日本は放送コンテンツの流通ルートが、系列によって縛られがちであることや、多チャンネル放送の独自コンテンツの育て方など、再検証してみる価値があるのではないか。他方で、TBSが展開している「デジコン6」のような試みもある。アジアのコンテンツを日本ではどのように展開できるのか、また、ローカル・コンテンツや国際共同制作の可能性などでも、新たなビジネスチャンスが作れるのではないかなど、その可能性を検討すべきだろう。改めて、多チャンネル放送らしいコンテンツとは何なのか。加えて、そのパワーをより大きくするためにはどうすればよいのかを考える時に来ている。今回の報告が、多チャンネル放送市場のさらなる開拓のビジネスにつながるヒントになればと思う。

開催日時 平成28年12月7日(水)
会場 明治記念館(港区元赤坂)
参加社数 46社 96名

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