シンプルな対談番組のため、テロップは必要最低限に、町田さんと反田さんが伝えたいポイントはその意図を汲み取りテロップで表現。収録中も制作サイドから余計な演出を加えず、反田さんメインに映像を構成。ご本人も馴染みのある音楽ホールを対談場所に設定し、スポーツ専門TV局では見られない趣に仕上げた。
作品紹介
従来、アーティストとアスリートは、それぞれ別の「種族」として考えられてきた。しかし改めて考えてみると、音楽家もアスリートも、劇場と競技場とで場所は異なれど、鍛錬してきた成果を一回限りのパフォーマンスとして世に放つ点で共通している。今回の対談コンセプトは、反田恭平さんの音楽家としての経験や卓抜したパフォーマンスを発揮するためのノウハウを町田樹さんの経験や考えと照らしながら対談することで、アーティストとアスリートの実践知が共有可能なことを広く社会に発信することである。
作品動画
【審査員講評】
株式会社 文藝春秋 執行役員 ライツビジネス局長 島田 真
スポーツとアートの知られざる関係。元フィギュアスケーターの町田樹氏が、ショパンコンクール2位に輝いた反田恭平氏の「身体と精神」に迫った。プロのサッカー選手を目指していたという反田氏の身体への洞察は深い。体幹の重要さ、演奏時の椅子の高さで音の深みが変わる。足裏、膝、腰、お腹のうち3点がしっかり座れていればいい音が出る……。反田氏はピアノの前に座り、それを鮮やかに実演してみせる。演奏中ゾーンに入ると、全ての音が可視化され、メロディが走馬灯のようにゆっくり見えるという。それは町田氏のフィギュアの体験とも重なるものだった。 一流の音楽家による贅沢な“講義”。アスリート寄りのアーティストとアーティスト寄りのアスリートだからこそ成立した対話だ。反田氏の言葉に圧倒的な重みがあった。