犯罪小説史に残る東野圭吾原作を連続ドラマ化。少年犯罪を題材にした作品に、少年法を改正する法律が成立した2021年、令和の社会情勢を反映させ挑んだ。映画版では描かれなかった、原作のさまざまな立場の人の葛藤を、ドラマならではの尺で群像劇として仕上げた。映画版で刑事役を演じた竹野内豊が、時を経て、ドラマ版では警察に追われる主演の父親役に挑んだ点も見どころ。映画「さがす」が話題の監督・片山慎三が映画さながらのスケール感で、高い演出力を発揮した。
作品紹介
長峰(竹野内豊)は早くに妻を亡くし、男手一つで育ててきた愛娘を残虐な方法で殺害される。ある日犯人の素性を告げる密告電話が入り、長峰は犯人の一人に接近、殺害。逃げたもう一人の主犯、カイジを追う。犯人二人は現行法では死刑が適用されない「少年」――。長峰を追う警視・久塚(國村隼)や自らも娘を持つ刑事・織部(三浦貴大)、執拗に事件を追う週刊誌記者・ゆかり(瀧内公美)ら様々な人間の思惑が絡み合い、世論も二分されていき…。そんな中、長峰の潜伏先のペンション経営者・和佳子(石田)もその正体に気づくことになるが、自らも子どもを失った苦しみから長峰に共鳴し、次第に手を差し伸べていく。娘の復讐に突き進む父の行動は是か非か。衝撃のラストに注目。
作品動画
【審査員講評】
上智大学 文学部 新聞学科 教授 音 好宏
優しい普通の父親が、娘を少年たちに惨殺されたことを知り、苦しみながらも、復讐を遂げていく東野圭吾の原作を映像化。人間の内面に潜む暴力性や支配欲を過激な映像で表現する一方で、犯罪を犯した少年に更生を期待する少年法の理念に納得しつつも、更生とはほど遠い邪悪への憤りという地上放送では扱いに躊躇する内容に挑んだのは、スクランブル放送ならではだろう。社会規範への従順性と逸脱という二面性を秘める難しい役柄を竹野内豊、國村隼らが好演していた。ドラマ制作に定評のあるWOWOWならではの作品として、評価したい。